金沢大学附属病院 Kanazawa University Hospital

診療科等一覧

Department List

ハートセンター

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  • ハートセンター長
    高村 雅之

  • 基本的に内科外科の垣根を越え、総合的に循環器疾患の治療を行っています。そのため毎週合同でカンファレンスを行い、患者さんの紹介や情報の交換、また各分野での新しい知識や技術を紹介し、お互いの啓蒙に努めています。下記に各分野での実際の診療内容を紹介します。

循環器内科

心構造疾患に対するインターベンション治療

狭心症・心筋梗塞など、冠状動脈の狭窄による疾患に対しては、基本的に橈骨動脈アプローチでカテーテル検査およびインターベンション治療を行っており、最短1日入院での検査・治療が可能です。当院では緊急例を含めて、年間200例を超えるインターベンション治療を行い、安定した成績を得ています。
近年の安定型狭心症例では、高齢、バイパス術後、腎機能障害、抹消血管疾患の合併など、複雑な病変形態のみならず、シュ種々の全身合併症を伴っていることが多く、カンファレンスにてインターベンションの適応から治療戦略、合併症の管理、二次予防まで徹底的に討議し、個々の症例にとって最適な治療方針を選択するよう努めています。
手技においては、血管内超音波(IVUS)や光鑑賞断層法(OCT)といったイメージングモダリティーによるる病変形態評価や、プレッシャーワイヤーを用いた生理学的評価をガイドとした新しいデバイスとエビデンスに基づいた、個々の病変に応じた最適なインターベンションを実践しています。また病院到着時生存例はもちろんのこと、院外心肺停止例に対しても救急隊、救急部・集中治療部と連携をとり、低体温療法を含めた高度救命処置を行って生存退院させた実績を多数有しています。

不整脈に対するアブレ−ション治療

頻脈性不整脈に対しては、抗不整脈薬による薬物治療は当然のことながら、若年例、薬物治療抵抗例あるいは抗不整脈薬に対する副作用がある患者さんに、非薬物療法のひとつであるカテーテルアブレーション(経皮的心筋焼灼術)を積極的に行っています。昨年は年間約100件の治療を行い、心臓の形態を表示する3次元マッピング装置なども用い高い成功率を収めています。特に心房細動に対しては、バルーンを用いたカテーテルアブレーション(クライオバルーン)も行っています。
カテーテルアブレーションが不適切あればICDを、徐脈性不整脈にはペースメーカーを、また重症心不全治療のためにCRT(心臓再同期療法、両心室ペーシング)あるいはCRT-Dの植え込みも行っています。しかし後者の治療は全例が有効ではないため、あらかじめ2Dストレインなどを用いた心エコー図検査を行い、適応症例を決定しています。
原因不明の失神に対して侵襲的な心臓電気生理検査を行う一方、あまり他院で行われていないhead-up tiltテストなど非侵襲的な検査を行い、失神の原因を総合的に判断しています。

循環器疾患の遺伝子診断

現在多くの心疾患の病因およびその病態推移に遺伝子が関与していることが明らかになっています。当院では、突然死の原因となりうる肥大型心筋症や拡張型心筋症、不整脈死を引き起こすQT延長症候群、動脈硬化性疾患の最大の危険因子である家族高コレステロール血症を中心に、積極的に遺伝子診断を行っています。多くの先生から症例をご紹介いただき、現在までに500以上の心筋症家系、150以上のQT延長症候群、2000以上の家族系高コレステロール症例を把握し、世界でも有数のセンターとなっています。最近では、次世代シークエンサーを用いた網羅的解析によりあらゆる遺伝性希少心疾患の原因分子の特定も行っています。

構造的心疾患に対する低侵襲カテーテル治療

構造的心疾患に対して新しい低侵襲治療として、従来の外科的弁置換術、形成術、内科的保存的治療に加え、新しく低侵襲治療を導入しました。高度大動脈弁狭窄症症例で、開胸術による外科的弁置換術が困難な症例に、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)を施行して良好な成績を収めております。また重症僧帽弁閉鎖不全症症例に対して低侵襲の経カテーテル僧帽弁クリップ術(MitraClip)を導入することで、高齢者、虚弱度の高い症例、併存症のためにこれまで手術を受けることが難しかった症例に対しても治療が可能となり、治療の選択肢を増やすことができるようになりました。さらには心房細動症例における左心耳血栓予防のための経カテーテル左心耳閉鎖術(WATCHMAN)も実施可能となりました。心房細動による脳梗塞リスクが高く、かつ出血の既往や併存症,転倒を繰り返す高齢者など、抗凝固剤の使用が可能だが、長期服用を希望しないか、好ましくないと思われる出血のリスクの高い症例に対して、脳梗塞のリスクを下げ抗凝固薬をやめることができるため,出血のリスクも下げることができる治療です。構造的心疾患患者は、高齢者や虚弱度の高い症例、様々な併存症を有する症例が多く、心臓血管外科、循環器内科、麻酔科、医療工学技士、看護師、生理機能検査技師から構成されるハートチームでカンファレンスを行い、個々の症例に対して最適な治療法を提供できるように総合的、多面的に判断して治療法を決定しています。

心原性ショックに対する補助人工心臓

あらゆる内科療法に抵抗性の心原性ショックに対して適応となる補助循環用ポンプカテーテル(IMPELLA)が、石川県で唯一使用可能施設として認定されました。
具体的には、急性心筋梗塞や劇症型心筋炎で搬送される緊急重症ショック症例に有効であります。更に重症心不全症例に対する左塞補助人工心臓(LVAD)および心臓移植までのつなぎの治療としての役割を有し、心臓血管外科、循環器内科、ICU、臨床工学技士を含めた重症心不全チームで、適応、導入、管理を行っています。

心臓血管外科

狭心症・心筋梗塞に対する外科治療

まず冠動脈バイパス術ですが、最近は虚血性心疾患における内科的治療適応が拡大し、外科サイドでは重症例(脳血管障害、上行大動脈石灰化、高齢、悪性腫瘍合併、末梢動脈硬化、呼吸不全)の手術が増加しています。当科ではOff-pump CABGを標準術式として手術を行っており、最近の stabilizer や cardiac positioning device の発達により、このような重症例に対しても安全で確実な完全血行再建が可能となっています。

弁膜症

弁膜症では、特に非リウマチ性僧房弁閉鎖不全症に関し、最近ほぼ全例で弁形成を行っています。右小開胸による MICS(低侵襲手術)や、ロボット支援下心臓手術も行い、患者さんに優しい手術を追求しています。弁置換と異なりワーファリンが不要で、さらに長期予後も置換に比べ優れています。さらに大動脈弁閉鎖不全症に対しても弁温存手術を行っております。また弁膜症に付随した不整脈手術(肺動脈隔離、MAZE 手術)も積極的に行っており、現在まで安定した成績を得ています。

大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術

大動脈瘤は胸部・胸腹部・腹部に分類されます。以前は、「破裂による突然死」によって発見されることも少なくありませんでしたが、近年はCTの普及により多くの動脈瘤患者さんが破裂の前に診断されています。この大動脈瘤に対する基本的な治療は「瘤を切り取り、人工血管で置き換える」という外科治療でした。しかし、人工血管置換術は、特に胸部では手術侵襲が大きいことが問題点の一つでした。これに対し、1990年代の初頭より欧米を中心に大動脈瘤に対する新しい治療法として、ステントグラフト治療(内挿術)が臨床応用されるようになりました。当科では1997年より、従来の人工血管置換術が困難と考えられた患者さん中心に、現在まで約1,500人の患者さんにステントグラフト留置術を行っています。2004年からは、緊急例・破裂例にも24時間対応できるようなシステムを構築しています。

小児心大血管疾患、成人先天性心疾患

2020年5月より、小児心臓外科および成人先天性心疾患外科を開始しました。ほぼ全ての先天性心疾患に対する外科治療を行います。小児科および循環器内科と常に連携し、姑息術や心内修復術、更にその後の管理に至るまで、継ぎ目のない診療を行います。こころの成長に配慮し、腋窩小切開や縮小胸骨正中切開から低侵襲手術を行います。また、必要に応じ、小児科カテーテル心臓治療を外科側から支援いたします。

肺動脈血栓塞栓症・深部静脈血栓症

深部静脈血栓症は、トラベラーズ(エコノミークラス)症候群として最近注目を浴びている疾患です。足の太い静脈に血栓(血のかたまり)ができるこの疾患は、時に肺塞栓から死に至る危険な状態となります。急な足のむくみ・腫れだけではなく、ゆっくりとした変化の場合や、少し症状が改善した場合でも大量の血栓が認められる場合があります。当センターでは、超音波検査・CT・核医学検査といった的確な検査の施行、さらに血液内科や循環器内科との完全な共同診療・治療で疾患の原因・治療までを迅速に行っています。

小児科

小児心疾患の診療

先天性心疾患、不整脈、川崎病といった幅広い小児期の心疾患の診療を行っています。小児循環器専門医を中心にカテーテル検査や心臓超音波検査などの情報をもとに、治療方針を決定し手術が必要な方、薬物治療を行う方、それぞれに対応いたします。手術に際しては小児心臓血管外科と協力して治療を行い、術後管理は小児集中治療専門医を含めたチームで対応します。新生児の患者さんでは新生児専門医をはじめとするNICUスタッフと協力して診療します。また先天性心疾患術後遠隔期の年長者や成人例に関しましても成人先天性心疾患専門医が循環器内科と協力して移行期医療を行っています。

先天性心疾患に対するカテーテルインターベンション

先天性の弁狭窄や心疾患術後の残存病変に対するカテーテルバルーン拡張術を行なっています。手術と比較して侵襲性が低く、術後の入院期間も短縮することが可能です。その他には動脈管や側副血管に対するコイル塞栓術も行なっています。

胎児心臓超音波検査、心臓MRI検査

私たちは産科医師協力のもと胎児心臓超音波検査を行っており、出生前の診断をもとに出生後の治療方針決定に役立てています。特に、出生後早期に介入を要する疾患を見つけることで安全に出生後の治療を開始することが可能です。またその際にはご両親に対して丁寧な説明を心がけています。当施設には胎児心臓病学会認証医が在籍しています。
また心臓 MRI を用いた循環動態の解析を積極的に行っており診療に役立てています。近年、心臓 MRI はファロー四徴症術後遠隔期の患者さんにおいて右心室の容積や肺動脈弁逆流量の定量を行うことで再介入の時期を決定することに有用であることが知られており、当院でも同様にその評価を行っています。また房室弁逆流の定量やフォンタン術後患者さんの血行動態評価にも有用で治療方針の決定に役立てています。

 

学校心臓検診の精密検査

 

私たちは主に金沢市、野々市市、白山市の学校心臓検診における精密検査に対応しています。毎年約150例の精密検査を行っており、QT 延長症候群をはじめとした致死性の不整脈の早期発見に努めています。心臓検診を契機に先天性心疾患が診断されるケースもしばしば経験しており、心臓検診によるスクリーニングは重要であると考えています。診断された場合はその後の治療も当院にて行うことが可能です。