金沢大学附属病院 Kanazawa University Hospital

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臓器移植センター

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  • 臓器移植
    センター長

    八木真太郎

  • 当院は腎臓、肝臓の臓器移植を行っており、2021年4月に臓器移植センターが開設されました。臓器移植医療は他の治療と異なり、免疫学的評価、生体臓器移植の倫理的な問題を十分に考慮する必要があります。また退院後はドナー(臓器を提供する人)・レシピエント(臓器提供を受ける人)ともに退院後の社会復帰の支援に加え、長期的なフォローアップによる臓器の機能評価と免疫抑制剤の管理、ライフイベント(就職、結婚、妊娠、出産など)に対する支援も必要です。当センターは移植コーディネーターや各臓器の移植スタッフだけでなく多くの関連診療科や多職種との連携を行い、移植医療が円滑に進むようにさまざまな角度より患者さんやご家族をサポートできる体制構築を目指します。

内容

  

腎移植

慢性腎不全の治療として、血液浄化療法と腎移植がありますが、QOLや長期予後の観点からは、腎移植が望ましいと考えられます。当院においても、泌尿器科、腎臓内科、リウマチ・膠原病内科ほか多くの部署が関係し、腎移植を行っています。生体腎移植では、ドナーおよびレシピエントのクロスマッチを含めた術前評価、ドナーおよびレシピエント手術と周術期管理、術後の免疫抑制剤を含めた全身管理等、幅広い専門的な知識が必要であり、各科・各部署の連携が、良好な治療成績のために重要な要素となっています。また、献腎移植については、臓器提供数がなかなか増えないこともあり、全国的にも件数は伸びてはいませんが、脳死提供が増えてきている現状から、腎移植が施行された場合には、以前よりも良好な経過となっています。また、献腎移植では、レシピエントの移植までの待機期間が長くなっていることによる高齢化・透析期間の延長等、問題はありますが、臓器提供があった場合に安全に移植手術が行えるよう、登録症例の年1回の検診が義務づけられ、全身状態を評価することも、腎移植担当者にとって重要な位置づけとなっています。当院でも、腎移植件数は近年増加傾向にあり、現在、1~2か月に1件のペースで腎移植を行っています。移植コーディネーターを中心に術前からかかわりを持ち、術後には生活および服薬指導、全身状態および移植腎機能の評価、腎機能廃絶の大きな原因である慢性拒絶反応のモニタリングに重要な抗HLA抗体スクリーニング等、必要なことは多岐にわたります。北陸の医療の中心を担う当院としては、移植医療の啓蒙や臓器提供の推進に果たす役割も重要であり、ポテンシャルドナーの拾い上げなど、ドナー候補者の希望を無駄にしないシステム構築、ドナー発生時の円滑な臓器提供のコーディネートなど、臓器移植センターの果たす役割は大きいと考えています。

  

肝移植

非代償性肝硬変や急性肝不全などさまざまな肝臓の疾患により肝臓の機能が低下し、内科では治療が困難と判断された場合に、救命のために肝臓移植を行っています。脳死肝移植と生体肝移植がありますが本邦では脳死肝移植が少ない状況にあります。生体部分肝移植は健康な家族から肝臓の一部分を切除して移植します。まず患者さん(レシピエント)の病気を伴った肝臓を全摘出し、健康な人(ドナー)より肝臓の一部を切除し、摘出した肝臓をレシピエントに移植します。脳死肝移植では、脳死ドナーより肝臓をいただき、レシピエントに移植します。肝胆膵・移植外科、消化器内科および麻酔科蘇生科により、レシピエントの評価、生体ドナー候補の精査が行われ、生体部分肝移植または脳死肝移植のどちらが最適であるか判断しています。
 肝臓移植は、高度な技術を要するレシピエント手術およびドナー手術が同時に行われます。そして肝移植後は,集中治療管理、免疫抑制剤の調整、感染症や拒絶反応などさまざまな合併症の対応が必要であり、専門性の高い知識と経験が必要です。当院では肝胆膵・移植外科のみならず、集中治療室、麻酔科蘇生科、消化器内科、腎臓内科、血液内科、感染制御部、循環器内科、心臓血管外科、神経科精神科、薬剤師、看護師、栄養士、放射線技師、臨床工学士、理学療法士など多職種が連携して周術期管理を行い、ドナー・レシピエントが元気に退院できるように努めています。また移植コーディネーターが肝移植の全体を通して、レシピエントとドナーのみならず家族の精神的なサポートも行います。
 当院では1999年より生体部分肝移植、2012年に脳死肝移植を開始しました。北陸で唯一の脳死肝移植認定施設です。2023年4月までに生体肝移植89例(再移植1例)、脳死肝移植8例を行い、全国と比較して遜色ない良好な治療成績を得ています。2008年よりレシピエントとドナーの血液型が一致しない場合の生体部分肝移植(血液型不適合肝移植)も導入しています。