金沢大学附属病院 Kanazawa University Hospital

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摂食障害支援センター

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  • 摂食障害支援
    センター長

    佐野 滋彦

内容

  

はじめに

当院の摂食障害支援センターは厚生労働省の「摂食障害治療支援センター設置運営事業」の一環として、令和4年10月に活動を開始しました。同事業は国と県の共同事業で1都道府県あたり1ヶ所の「摂食障害支援拠点病院」の設置を目指しており、当院は全国で5ヶ所目、5年ぶりの新規設置となります。

  

摂食障害とは

摂食障害は若年女性を中心に発症する精神疾患で、端的に言えば「食事に関する行動に異常が起きる病気」です。多くの患者さんは「体型が細く、体重が軽くなければダメだ」という意識が病的に強まり、食事の摂取量を極端に少なくしたり(拒食)、食べたものを自ら嘔吐する(自己誘発性嘔吐)ようになります。またその反動として、大量の食べ物を短時間でかきこんでしまう(過食)こともあります。結果として食事や体型維持に多くの時間やエネルギー、お金を費やすことになり、他の活動の幅が狭まり、患者さん本人のみならず、その姿を見守るご家族も疲弊していきます。
発症年齢こそ若年のことが多いですが難治化、長期化することが多く、患者さんの人生の長期間にわたって生活の質を損ない続けます。また多くの患者さんは低栄養や電解質異常で身体的な危険を生じ、自傷や窃盗など食事以外の面での問題行動を伴うこともあります。窃盗で社会的な立場を危うくしたり、低栄養や自傷から死に至ることもあります。
これだけ有害かつ危険な疾患である一方、有効な薬物療法が確立されておらず、治療には心理的アプローチと身体管理の両面で高い専門性が求められます。そのため、摂食障害に対し有効な治療を行える医療機関は限定されており、その地域差も大きいのが現状です。

 

当センターの位置付けと役割

 

当センターは現在のところ、当院精神科のスタッフを中心に運営されています。もともと当院精神科には重症の摂食障害患者さんに対する高い治療機能と実績があり、それが認められてセンター設置が実現したという面があります。しかしながら、当センターの主な役割は治療ではなく、石川県における摂食障害の治療や支援の体制を整備し、地域で患者さんを支えていく方法を充実させることです。つまり、「摂食障害の患者さんをたくさん治療すること」は精神科の役割で、センターは「地域の摂食障害対応能力を高めること」が使命です。そのための活動として、患者さんやご家族からの電話相談に対応したり、病院・学校・地域の方々に対し治療のレクチャーや患者さんを早期発見するための啓発活動などを行い、県と当センターを中心にした摂食障害対策ネットワークの構築を目指しています。
センターの活動開始により患者さんの受診ニーズが喚起され、当院精神科を受診する摂食障害の患者さんは更に増えています。これについて、患者さんの重症度や治療の進展度合いに応じて県内の他の医療機関と役割分担を図り、また学校や行政機関等で適切なサポートを行っていただけるようにして、患者さんにとってより良い・身近な環境を利用して回復を目指していただけるようにすることが目標です。

 

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