診療科等一覧
Department List脳卒中センター
脳卒中
センター長
中田 光俊-
脳卒中(脳梗塞、脳出血やくも膜下出血)は直前まで元気にしていた人が突然倒れて死亡や寝たきりなどの後遺症を残す疾患ですが、近年の知見により脳卒中発症後、超急性期からの治療介入を行うことで、後遺症を軽減させること、場合によっては後遺症を残さず退院できることが可能となってきました。一方、緊急性の高い脳卒中を全ての病院で受け入れる体制を整えることは困難です。当院で迅速な対応を必要とする脳卒中患者に対し、24時間365日いつでも治療できる体制を構築するために脳卒中センターが開設されました。患者さんに速やかで安全な治療を提供するため脳神経外科と脳神経内科が連携し、質の高い脳卒中医療を提供していきます。
内容
これまでの治療体制
脳卒中は悪性新生物、心疾患、老衰に次いで死亡原因の第4位(人口動態統計2021年)、介護の原因としては認知症に次いで第2位であり社会的損失の大きい疾患です。医療体制構築とその均てん化を図るため、2018年12月に「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」が国会で成立し、2019年12月に施行されました。同法に基づいて脳卒中治療機関を適正に配置する取り組みの一環として一次脳卒中センター(PSC; Primary Stroke Center)が全国に設置されました。PSCの主な認定要件は脳卒中専門医が常勤して脳卒中ユニット(stroke unit: SU)を有し、24時間365日脳卒中患者を受け入れて速やかに血栓溶解療法(tPA)を開始できることで、石川県では当院を含む12施設で認定されました。その後PSCのうち、血栓回収療法が常時施行可能(脳血管内治療専門医が3名常勤して年間12例以上の血栓回収療法の実績あり)、かつ脳卒中患者へ医療および介護に関する適切な情報提供を行う脳卒中相談窓口を有することが認定要件のPSCコアが設置され、2022年に当院が県内で唯一認定されました。日本脳卒中学会に報告した急性期脳卒中の診療実績は2019年の65人から2022年には117人に増加しました。
脳卒中の治療内容
脳卒中センターでは内科的治療を主とする脳神経内科と外科的治療を担う脳神経外科が連携して治療体制を強化しています。特に迅速な対応が必要とされる急性期脳梗塞では血栓溶解薬(tPA)のみならず抗血栓剤や神経保護剤などの内科的治療を速やかに行う必要があり、主幹動脈が閉塞している場合には血栓回収療法などの血管内治療やバイパス術などの血管外科手術が必要な場合もあります。脳出血では早急な血圧管理と外科的な血腫除去術、くも膜下出血では出血源である動脈瘤に対して開頭クリッピング手術やコイル塞栓術に代表される血管内治療(カテーテル治療)を迅速に施行する必要があります。近年の技術進歩により動脈瘤の血管内治療はステントなどのコイル塞栓術支援デバイスやフローダイバーターなどの高度な治療が選択肢として増えています。稀な疾患である脳動静脈奇形、硬膜動静脈瘻やもやもや病などが脳卒中を引き起こすこともあり、緊急で脳動静脈奇形摘出術やバイパス術、液体塞栓物質による塞栓術などの血管内治療、さらにはこれらを組み合わせたハイブリッド治療が必要になることもあります。このように多岐にわたる緊急治療が必要な場合でも、ただちに各々の指導医・専門医が集まり救急部、手術部、放射線部や集中治療部と連携して迅速に高度な医療を提供できる体制を整えています。脳卒中医療では急性期を過ぎた後の治療も重要で、脳卒中後の神経症状を回復させるために薬剤部、看護部、リハビリテーション部が一丸となって治療を行い、早急にリハビリテーション病院へ転院できるようにしています。転院や先行きを不安視する患者さんや家族と向き合い、切れ目のない療養支援を行うため、地域医療連携室との連携も不可欠です。2022年9月には地域医療連携室に脳卒中相談窓口が設置され、患者さんの入院が決まった時点から退院を見据えた支援を協力して行っています。
後進の育成と教育体制
当センターでは次世代の脳卒中治療を担う医師の教育にも力を注いでいます。日本脳卒中学会の指導医が複数在籍しており、さらに血管外科治療を行う日本脳卒中の外科学会の技術指導医と血管内治療を担う日本脳神経血管内治療学会の指導医が第一線の治療を行いながら若手の指導育成を行っています。専門医を取得するためには認定教育施設において指導医の下で経験を積む必要がありますが、当院は最新の知識、技術を習得できる数少ない研修施設の一つです。